地産地消レポート 地元、食べてます記事一覧

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宮崎県高千穂町岩戸「五ケ村村おこしグループ」

地鶏うどんに地鶏そば、1個70円の温泉団子、平均年齢70歳

山里のふだんの食事がむらと神楽と棚田をまもった

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問い合わせ先
天岩戸温泉茶屋
宮崎県西臼杵郡高千穂町大字岩戸五八番地
電話 098-276-1213


現代農業2004年8月号増刊
「おとなのための食育入門」より

田舎の本屋さんで購入する
田舎の本屋さんで購入する

ノーブランドの地鶏のだしで昔ながらのうどん・そば

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温泉茶屋の看板娘のみなさん

 こうして、平成6年、天岩戸温泉茶屋が開業した。料理をつくるのは、グループや地元の主婦。6名でローテーションを組み、常時2、3名が店に立つ。途中、料理人を雇ってメニューを変えたこともあったが、結局は、オープン当初から出している、地鶏うどん・そば、バラ寿司、そして温泉団子(「だご」はまんじゅうの方言)におちついた。いずれも、高千穂の家々でふだん食べているものだ。

 高千穂では、いまも、手回し式の製めん機で自家製の手打ちうどんを打つ家が多い。一般のうどんよりひとまわり細く、やわらかめ。

 茶屋には製めん機があり、地粉を使った昔ながらのうどんを必要な分だけ、つくって出す。そばもこの製めん機で打っている。

 このうどんやそばを、家々で飼っている地鶏のガラでとっただしで食べる。自家用の鶏を飼っている家は多く、昔からお客があるときや祝い事のときには、家の鶏をつぶして、もてなすのが習慣だった。地鶏うどんは、「だご汁」ともいい、煮しめと並んで、高千穂に伝わる夜神楽のふるまい料理でもある。

 「風呂入り目的じゃなくて、うどんがおいしい。そばがおいしいと言って、わざわざ食べに来らす。延岡からも、日向からも。この前も、そばを女の人が二杯食べて『おばちゃん、二杯も食べておかしい? 私は延岡からずーっとそばを食べ歩きしてきたけど、こんなおいしいそば、初めて食べました』って。たしかにめんは打ちたてだけど、そば粉は、普通にあるものだし。鶏はこのあたりで飼われている鶏で、名古屋コーチンとか、名の知れた鶏でもないしね。でも親鶏には若鶏には出ない味が出るから、だしもおいしいとでしょう」と、茶屋メンバーの高藤美津子さん。

 「お客さんが『若い人なら入らんけど、のぞいてみたら、おばさんたちがたくさんいたから、入った。そしたら、やっぱりおいしかった』って。まだまだ私たちが看板娘よ」と工藤サヨ子さん。

 高台にある茶屋からは、谷のこちらも、向こう側も見わたす限りの棚田。窓からの風は、夏でもさわやかで心地よい。美しい風景を眺めながら、茶屋のおばちゃんとの会話を楽しみながら、風呂上がりに食べるうどんは、地元の人にはなじみの味。帰省客にはなつかしい味。そして、遠方からのお客さんには、ほっとする味、そしてどこか新鮮な味なのかもしれない。

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名物地鶏うどん。一緒にバラ寿司を頼むお客も多い

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昨年、集落の各家庭の「うどん機械」を持ち寄ってみたら、古いものは戦前のものから最近はイタリア製のパスタマシンまで、こんなにあった

 グループで営む農家民宿「神楽の館」(後述)の宿泊客や、神楽体験、交流会の食事も温泉茶屋でまかなう。ここでも、うどん、そば、地鶏料理は大人気だ。

「このあたりは昔からみんな自家用の鶏を飼っていた。いまでは何軒かしかないけど、それでも廃鶏はたくさん出る。二年くらいしたら更新せんと、卵を産まんようになるからね。廃鶏というても、ブロイラーとは全然味がちがう。どこの鶏もここの在来種のトウモロコシを食べて、よく運動しとるから。うちの鶏も山から帰ってきたら、小屋から出てうろうろしてることが多くてねえ(笑)。でもそうしてミミズや虫も食っているから味がいいとやろう」

 と言うのはグループのメンバーで、茶屋に地鶏を提供している甲斐息さん(74歳)。温泉茶屋で、農家民宿で、地鶏を使った料理がたくさん売れるようになり、五ケ村で昔のように鶏を飼う人が少しずつ増えてきているとも。

 「廃鶏になったら、ここで引き取ってもらえるという安心感があるから。集落のそこかしこから鶏が持ち込まれて、一年中よそから買うことはありません」