地産地消レポート 地元、食べてます記事一覧

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宮崎県高千穂町岩戸「五ケ村村おこしグループ」

地鶏うどんに地鶏そば、1個70円の温泉団子、平均年齢70歳

山里のふだんの食事がむらと神楽と棚田をまもった

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問い合わせ先
天岩戸温泉茶屋
宮崎県西臼杵郡高千穂町大字岩戸五八番地
電話 098-276-1213


現代農業2004年8月号増刊
「おとなのための食育入門」より

田舎の本屋さんで購入する
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「カッポ酒が売れるほど、山がきれいになるなあ」

 「一生懸命練習して年に一度の舞台ならやりがいもないけど、ここは神楽を1年で10年分舞うとじゃから、練習の熱の入れようも違うし、どこよりもうまくなる」とグループの佐藤光さん(52歳)。

 「神楽の館」ができ、年に一度の夜神楽の場は守られた。そしていまでは、町内外の人びとの集う場所にもなっている。グループでは、夜神楽時期以外でも「神楽体験ツアー」を催し、団体客や、村づくり交流会などでも神楽を舞うようになった。宿泊客の要望に応える「注文神楽」の機会も増えた。それが「1年で10年分舞う」ということなのだ。

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神楽の館ができ、若い舞い手も育った。最年少は、中学2年生

 そうした父母のがんばりを見ていた子どもたちが、手が足りないときは加勢してくれるようになった。そして一時は2人だった神楽の舞い手(奉仕者:ほしゃ)は、7名になり、十代〜五十代のほしゃが育った。

「若い人も年配者の神楽に負けんごとうまくなった」

「自分たちの神楽を見る目も肥えたしなあ(笑)」

 神楽談義に花を咲かせる平均年齢70歳のメンバーたちに安堵の表情が浮かぶ。

 神楽体験が人気を集めると、グループでは「神楽だけではなく、高千穂の田舎の暮らしを体験してもらったらどうか」と考え始めた。

 「神楽体験で来たお客さんが、『刈干しってなんですか』『タケノコ掘りがしてみたい』と言うとですよ。こちらも、神楽だけじゃ、飽きるかなと思ってたからですね。そんなことでいいなら、と始めたわけです」(工藤正任さん)

 そして、この春行なわれたタケノコ掘りツアーには、定員の30名を超える人びとが集まった。

 「掘る要領がわからなくて、なかなか掘れない人がほとんど。ふだんは、皮のむかれたパック詰めを買っているという人は、掘るのもはじめてなら、皮をむくのもはじめて。皮をはいでいくとタケノコが小さくなっていくように思うらしく、むきながら『もったいない、もったいない』って言うんですよ。そのあと自分たちで料理して食べると、いままで食べたタケノコの味と全然違うそうなんです」と黒木今朝一さん(69歳)。

 集まって話をしていると、さらにこんな話になった。

 「タケノコ掘りは、竹さえきちんと手入れすれば、秋までずーっとできるもんなあ。ここの山だけで真竹、くれ竹と数えたら12種類はある。時期をずらして出てくるから」

 「竹は切らな生えんから、竹切りして、タケノコ掘りもしたらどうじゃろか」

 「ならば、カッポ酒の入れ物もつくろう」

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神楽の準備の体験。カッポ酒を入れる竹筒や杯を作る

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「神庭」と呼ばれる神楽舞台の四方に下げる和紙の飾り、彫り物(えりもの)づくりの体験

 カッポ酒とは、刈干し切りなどの山仕事のときに、孟宗竹の竹筒に酒や焼酎を入れ、たき火で燗をしたこの地方独特の酒の飲み方である。

 「竹を切って、タケノコを掘って、カッポ酒を飲めば、竹やぶもきれいになる。カッポ酒の入れ物が珍しいて言うて、ほしがる人が多いから、今度作って売ってみようか?」

 「売れれば売れるほど、山がきれいになるなあ」

 グループでは、2003年から町内の国民宿舎「杜のリゾート高千穂荘」と提携したイベントも行なっている。高千穂荘がインターネットやチラシで100名前後のツアー客を募集。国民宿舎側は、宿泊客に一泊朝食で対応し、体験と地元料理を囲んでの交流会をグループが受け持つのだ。9月25日・26日には、神楽の館前に特設舞台を設け、向かいの山から昇る月の明かりとかがり火による神楽の奉納。10月16日・17日は、刈干し切り体験・見学の旅。民謡「刈干し切り唄」の指導・披露も行われる。いま神楽の館の建つ場所は、かつて五ケ村地区の共同の刈干しの場所でもあった。

 「秋は、高千穂で刈干し切り唄の全国大会があるから、それに合わせて、刈干し切りの体験をしてもらおうと思って。労働の歌を現場で体験してもらう。刈干し切りのあとは、昔から『山ん神まつり』ていうて、鶏をつぶして料理したり、カッポ焼酎わかしたりしてお祭りをした。その食べものがいま、伝わっちょるわけだから……。働いたあとの食事はおいしいですよ」

 工藤正任さんは楽しそうに語った。