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山形県小国町 小玉川・樽口・伊佐領集落

山の恵みを生かした観光ワラビ園は「コミュニティの源」

集落の山を「観光ワラビ園」に、「山菜の学校」に

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現代農業2006年8月号増刊
「山・川・海の「遊び仕事」」より

田舎の本屋さんで購入する
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ワラビ園の仕事は春一番の祭り

 小玉川から峠道をくねくねと車で走ること20分。途中、飯豊連峰が一望できる樽口峠を越えて、しばらく下ったところに、戸数わずか9戸の樽口集落がある。

 30年前、もっとも早く観光ワラビ園をオープンしたのがこの小さな集落であり、今は面積を広げて、20ヘクタールを運営。5月半ば〜6月半ば(期間はその年によって違う)の毎週、日・水・木曜に開園しているが、リピーターも多く、日曜日には300人近い来園者があるという。

 6月11日の日曜日、開園直前に訪ねると、集落内を走る道路脇には、車がずらりと止められ、オープンを今か今かと待ちわびる多くの人でにぎわっていた。

 「観光ワラビ園は、春一番の集落のお祭りなのよ」

 こう言って迎えてくれたのは、樽口集落の総代、渡邊正義さん(53歳)だ。

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「樽口観光ワラビ園」を切り盛りする樽口集落のみなさん。右端が渡邊正義さん(本業はきのこの栽培・販売)

 ほかの観光ワラビ園と同様、管理運営は、すべて集落で行なっているが、このシーズンは、勤めに出ている人も休みをとって、ワラビ園の仕事に従事するそうだ。この日も、入り口にある管理棟では、集落の若い衆が案内役を務め、調理棟では、父ちゃん、母ちゃんたちがイワナを焼いたり、山菜汁をつくりながら、あたふたと来園者を迎えるための準備に追われていた。集落に住んでいるのは、子どもからお年寄りを含め、約30人だそうだが、調理棟の周辺だけでも、その半数近い住民たちがせっせと働いており、渡邊さんの言うとおり、たしかにお祭りの舞台裏のようだった。

売り上げは集落の事業費に

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入園料の売り上げで建てた調理棟。樽口の集落有林はおよそ500ヘクタール。

 「入園料をいただく以上、いいワラビを採ってもらえるようにしなくちゃいけない。だから、栽培管理はしっかりやっている」と、渡邊さん。

 毎年7月上旬までに、刈り払い機で全面下刈りを行ない、その後、肥料をやり、秋までにワラビを十分生育させる。霜が降りれば枯れるが、こうしておけば、ワラビの根に栄養が蓄えられ、翌年、太くていいワラビが採れるそうだ。

 「5月の連休のころに、山焼きをするが、これも集落総出でやる。防火線をつくって、火入れをして……。そりゃ、熱くてたいへんな仕事だよ。だから、火が鎮火した後は、体もしっかり鎮火させる(笑)。まぁ、公民館で今後の話をいろいろするわけだけど、半分は、いや、ほとんど宴会だな(笑)」

 集落で事業をするには、意思疎通が大切。だから、樽口集落では、しょっちゅう飲み会をするのだとか。そんな中から、アイデアが生まれ、観光ワラビ園の運営に生かされる。

 入園料の売り上げは、園の維持費や集落の事業費に当てている。人足代は女性が6,000円、男性が7,000円、野焼きの仕事は1万円を超える。人足代やら肥料代やらを引くと、半分も残らないが、それでも、テレビの共同アンテナを直したり、神社を建てたり、皆で旅行に行ったり……。立派な調理棟も、観光ワラビ園の売り上げで建てた。

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サービスの山菜汁をつくる樽口集落の女性たち

 観光ワラビ園を始める前は、公民館の改築など、生活環境を整備するための費用は、各家から出していた。しかし、戸数の少ない集落にとって、それはかなりの負担だ。かつて、集落の事業費を捻出するため、仕方なく山を手放したこともあった。だが、そのとき、「山は一度手放すと、二度と戻ってこない」ことを痛感し、以後、「絶対に売らない」と決めた。今はそうした費用が観光ワラビ園の売り上げでまかなえるようになり、集落のみんなは、とても喜んでいる。山間の小さな集落は、観光ワラビ園の成功があったから、今日まで維持できたともいえる。

 「だからこそ、みんな、こうして一生懸命になって働いている」

 こう話す渡邊さんの顔は、とても誇らしげだった。