地元の食材たっぷりの学校給食で、いきいき町づくり
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問い合わせ先
秋川ファーマーズセンター
〒197-0814
東京都あきる野市二ノ宮811
電話042-559-1600
営業時間9:00〜17:00(バーベキューコーナーは20:00まで)
定休日 年末年始と不定期休を除いて、無休

小規模な農地はメリット 地の利を活かした輪作が直売所の魅力を生む

農家の願いがかなって直売所オープン

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秋川ファーマーズセンター「農畜産物直売コーナー運営委員会」会長の谷澤民夫さん(74歳)。

 運営委員会会長となって8年になる谷澤さんは、この地で生まれ、農家の後継者として戦後すぐに就農し、60年近くにわたって農業とともに歩んできた専業農家である。

 「昭和30年代後半ごろから農地の規模拡大がいわれるようになったが、このあたりは昔から小さな農家の集まりなので、規模拡大をしようにも無理だったのです」

 谷澤さんの周りでも後継者がなく離農する人が増え、荒れた農地も増えていた。それでも農業を続けようという生産者は、畑作を中心に農地を守ってきたが、1戸あたりが所有する農地面積が少なく、たとえば大根をつくっても、100本程度では市場でなかなか相手にされない。では、どうしたら売れるのか、どうすれば農業を続けていけるのか。

 「そこで家の戸板をはずして、その上にとうもろこしを並べ、街道筋で自分たちで売るようになりました」

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家の戸板の上に並べたとうもろこしが直売の始まりだった。

 もぎたての鮮度抜群のとうもろこしは、新興住宅街の人々に喜ばれ、谷澤さんたちは仲間と話し合って、とうもろこしや野菜を車で移動販売もするようになる。1970年(昭和45年)ごろからは、当時の秋多町役場駐車場で「日曜即売」を開始。毎週1回の定期的な新鮮野菜の直売は地元で評判となり、次第に、地元の人々の暮らしになくてはならない販売方法として、常設の直売所の設立が生産者からも消費者からも待たれるようになった。

 日曜即売の経験と実績を積み重ねて20年余を経た、1993年(平成5)。多摩地域の東京移管100周年記念事業の一環として、総工費6億円の大きなイベント会場が建てられた。記念イベント開催後、この建物自体は秋川市(現:あきる野市。あきる野市は秋川市と五日市町が合併して1995年に発足)の施設として、また、その運営をJAあきがわがまかされることになり、JAあきがわでは、「秋川ファーマーズセンター農畜産物直売コーナー運営委員会」を立ち上げ、同年8月、直売所としてオープン。こうして秋川市の生産者にとっても、市民にとっても待望の直売所、「秋川ファーマーズセンター」が誕生した。

地の利を活かした輪作の野菜づくり

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生産者現在120人。出荷者として登録できる条件は、あきる野市の旧秋川地区に居住し、秋川地区で農畜産物を生産している人。

 こうして誕生した「秋川ファーマーズセンター」には現在、120人の生産者が登録し、このうち30〜40人が1年を通して、ほぼ毎日、四季折々の野菜を直売所に出している。どんな野菜をつくって、いつ販売するかは、生産者各人の裁量に任されている。それだけではなく、ほうれんそうは1束=300gというように1パッケージの量は決めているが、値段も生産者各人で決めることになっている。

 「会員のあいだでは、生産者1人で直売所が開けるくらいの種類の野菜をつくろうと話しています」と、谷澤さんは生産者の心意気を語る。

 その心意気は、多彩な品揃えを支えると同時に、栽培方法にもプラスの影響をもたらした。「このあたりはもともと、小さな農家が多いので小回りがきくのです。常設の直売所ができたことで、いろいろな種類の野菜をつくって出す。出せば、売れる。売り上げが伸びるにつれて、昔の農家でやっていたような栽培方法に帰ったのです」と、谷澤さん。

 一昔前まではどこの農家でも、家族の食卓を満たすために四季折々の野菜を小量ずつ畑につくり、1年間の食糧の大部分を自給していた。秋川ファーマーズセンターの生産者は、そんな昔ながらの「輪作」の方法を継承して、多種類の作物を組み合わせて野菜をつくっていると、谷澤さんはいうのである。

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野菜を追加する生産者。日頃の長靴姿でも入られる気軽さは生産者にとって嬉しい。

 輪作にたいして、毎年同じ畑に同じ野菜をつくる「連作」を行うと、連作障害がおきて発育が悪くなったり、病害虫も発生しやすくなる。そうなると、手間が増えたり、農薬による防除が必要となることもある。輪作を行うことで、連作による障害を防ぐことができ、結果として、農薬の使用量を減らすことにもつながる。多種類の野菜を組み合わせてつくることが、安全・安心の野菜づくりとも結びついているのである。

生産者と消費者を結ぶ食の提案

 輪作の知恵を駆使して、年間80種類、四季を通して、毎日50〜60種類の新鮮な季節の野菜が並ぶという強みのほかに、スーパーなどでは敬遠されるような野菜が、積極的に販売されていることも、秋川ファーマーズセンターの大きな強みだ。フットボール大の冬瓜、たくあん漬け用の干し大根、大きさが不ぞろいのかぼちゃ、里芋の茎・ずいきなど、販売価格に比して売り場面積を要するもの、また、そうめんかぼちゃ、はやとうりなど、いまだポピュラーでない野菜をつくって出す。そうすると、そんな生産者からの提案ともいえる変り種野菜もとても歓迎してくれるお客さんがいる。

 直売所の固定客ともいえる地元のお客さんは、購入した野菜がおいしいいと生産者の名前を憶えてくれる。そして、「あの人の野菜はおいしい」と口コミで評判が広がる。この日の朝、開店直後に売り切れとなったIさんのフルーツ系トマトも、評判が評判を呼んで人気となったのだそうだ。だから、もし不出来なものを出すと評判が落ちてしまうから、生産者は競争して、いいものを出すための努力を絶やさない。

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生産者の名前を頼りに購入。生産者も工夫を凝らした手作りシールで特徴をアピール。

売り上げは生産者の創意と工夫しだい

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生産者の情報が調べられるタッチパネルも設置。生産者からのメッセージも見られる。

 秋川ファーマーズセンターに並んでいるすべての農作物は、パッケージのラベルに値段とともに、生産者の名前と生産者番号が記されたシールが貼ってある。また、店内の壁の一角には生産者の顔写真が掲げられていて、その横には、生産者番号から検索するタッチパネルが設置されている。「この野菜はどんな生産者がつくったのだろう」と、関心をもったお客さんにが検索すれば、ひとりひとりの生産者の農業にかける思い、得意とする野菜の種類などを見ることができ、消費者と生産者の信頼関係をむすぶツールとなっている。

 「ここに直売所を開いて15年。私たち生産者は地元のお客さんに教育してもらって、ここまで続けることができた。だからこれからも、ウソいつわりのない正直な仕事をしていかなければならなりません」

 谷澤さんは続けて、「直売所での販売を中心にした農業は、生産者自身の創意と工夫につきます。お客さんからお金をいただくのだから、生産者は技術を向上させ見聞を広めながら、常に一定レベルのものを出そうとがんばっています」と語る。

 戸板にとうもろこしを並べ、車で移動販売し、そして「日曜即売」を続けながら、地元消費者とのつながりを育てていった。長年つちかった自主的な販売方法は、大型の常設直売所となった今もしっかりと受け継がれている。

 秋川ファーマーズセンターの登録生産者の売り上げ上位者は、1ヘクタール以下の小規模な農地を生かして野菜をつくっている人が大部分を占めている。規模拡大が難しいというマイナス要因を逆手にとって、小規模の農地を「地の利」として生かしながら、多種類の野菜をつくって直売所に販売し、実績をあげてきたのである。


◆参考サイト:
《あきる野市》
 http://www.city.akiruno.tokyo.jp/
《JA東京中央会》
 http://www.tokyo-ja.or.jp/