地元の食材たっぷりの学校給食で、いきいき町づくり
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問い合わせ先
ドルチェ エ カフェ アランチャ
〒641-0014
和歌山県和歌山市毛見994
電話073-444-6171
(IP電話)050-5514-4381
http://www.arancia.cc/

2章 あたりまえのこと

農家を一軒一軒たずねて回る

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下津町の上山さんで庭先に用意されていたキウイフルーツ。こうした仕入れ先を何軒か組み合わせて回る(撮影:事務局)

 そもそも、農家から直接仕入れるとはどういうことだろうか。取材の日、ちょうどキウイフルーツを仕入れに行くという、小嵐さんに同行させてもらった。

 その日の仕入れ先は、下津町の上山さん。仕入れ用のバンに乗り、しばらく進む。気がつくと、いつのまにかミカン畑が斜面に広がる山沿いの道へ。車一台がやっと通れるほどの細い農道を、小嵐さんは手馴れた運転でさらに進んでいく。

 上山さんの家に着くと、コンテナに入れられたキウイフルーツがすでに庭先に用意してあった。これをバンに積み込んで、その日の仕入れは終了。いつもはあらかじめ連絡しておいて、こうした巡回先を数軒組み合わせて回り、日々の食材を仕入れている。

あたりまえのことの積み重ね

 県外の企業に勤めていた小嵐さんが、地元の和歌山県に戻り、お店を開いたのは、1999年のこと。知り合いに農家がいて、フルーツは手に入れられるだろう。また、和歌山県はフルーツ王国、地元のものだけでもさまざまな種類が揃うだろう。そんな見込みもあって、カフェを始めることに決めた。その際、知り合いからパティシエを紹介され、ケーキの販売なども加えることにした。それが、今ではお店のカラーにもなっている、さまざまなドルチェへとつながっていく。

 開店当時は、ポストハーベストの問題が騒がれていた。エコロジーに関心もあって、できるだけ農薬を使わない安心して食べられる農作物を使いたいという気持ちから、そうした農作物を選んで仕入れるようにしていった。とはいえ、農業にとくに強い関心があった、というわけでもない。もちろん食材としての知識はあったし、まったく関心がないわけではなかったが、生産に関わることなど、その後、知り合っていった農家から教えてもらったことも多い。

 今のドルチェ エ カフェ アランチャのスタイルは、こんな感じでできあがってきた。小嵐さんにしてみると、信頼しあえる農家との出会い。そんな出会いを大切にしながら、自分が良いと思うものを選んでいくうちに、今のやり方になったという方が近いようだ。だから、今でこそ地産地消という言葉を使って、自分の思いやお店の特徴を紹介することもあるが、特別に意識してきたかというと少し違う。ほんとうは、こだわりと言ってしまうのも、語弊があるのかもしれない。小嵐さんにしてみれば「あたりまえのこと」を積み重ねてきた結果だった。

業務用を仕入れてしまえば簡単だろうけど

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直接仕入れることでの苦労もあるが、栗の渋皮煮ひとつを大切に手間をかけて仕込んでいく

 とはいえ、フルーツを直接仕入れることで、お店側としては苦労もある。たとえば栗。渋皮煮として利用するためには、生で直接仕入れた大量の栗の鬼皮を、お店でひとつひとつ剥かなくてはいけない。それが終わったら何度も水を替えて煮る。「業務用の加工済みのものを仕入れてしまえば簡単なのだろうけど」と小嵐さん。だが、信頼できる農家とのつながりと地元の宝物を大切にしたいから、やはり一手間をかけて栗を仕込む。

 そんなドルチェ エ カフェ アランチャは、農家にとって、どう映っているのだろうか。たとえば、ドルチェ エ カフェ アランチャ1軒で使用する農産物の量は、農家の生産量から考えると必ずしも多いわけではないだろう。

 しかし、農家が自信を持って育てた農作物を、信頼して仕入れてくれる。市場では見た目が悪いなどの理由で取り扱ってもらえないものだとしても、大事に使ってもらえる。見た目をよくするための農薬使用を減らせることは、じつは消費者以上に生産者にとって嬉しいことでもあるだろう。そのうえ、わざわざ農家の庭先を回って、取りにまできてくれる。そんなやり取りは、おそらく農家にとっても、互いに信頼しあえる、気持ちの良いやり取りなのではないだろうか。

 こんな話もあったという。イチジクを使ったケーキを作った時、仕入れた農家がとても喜んでくれた。イチジクは独特の見た目が特徴だ。そのイチジクが、ケーキの素材として使われて、姿を変え、「こんなにかわいくなった。」と。農家が想像もしない形で農産物を生かしてくれるパティシエとの出会いは、農家にとっても嬉しい出会いだ。

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イチジクのショートケーキ。日頃見慣れたフルーツも、パティシエの手で農家が想像もしない形に変身

信頼し合える関係を広げていく

 ドルチェ エ カフェ アランチャでは、仕入れる農産物の代金は市場価格などにならう形で支払うことが多いが、安く仕入れさせてもらおう、といった交渉はしたことがないという。直接仕入れて、一手間をかけながら、農家とのやり取りを続けてきたことを、小嵐さんはこう話す。「信頼しなきゃできないよ。だましあうような人とやっているわけじゃないから。」

 仕入れ先の農家は、いつも農家からの紹介で知り合ってきた。信頼できる農家から信頼できる農家を少しずつ紹介してもらう。そうして広がった仕入れ先の農家は、今では30軒を超えるほどになった。

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紀美野町(旧野上町)の北さん。仕入れ先として、信頼しあえる大切な農家の一人


◆参考サイト:
《近畿農政局 「食料自給率向上に資する取組事例」》
 http://www.maff.go.jp/kinki/soumu/suishin/sensin/jikyuritsu/
0709_7wakayama1.html/

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