地域循環型農業で実現した完全米飯給食
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循環型農業の米を学校給食に

 八津田小学校の学校給食の主食は、減農薬・減化学肥料の町内産米。6年生が5年生のときに地域の農家の指導を受けながら学校田で育てた米と、有機液肥利用者協議会の農家が育てた米だ。

 地場産給食は、この町の農業政策と深く結びついている。旧築城町と合併して築上町になる前の旧椎田町は、グローバリゼーションによって衰退した農業の活路を有機農業に求めた。有機肥料の原料として着目したのが、し尿だった。町はし尿処理のために周辺自治体と組織した広域衛生組合を脱退して液肥化する決断を下し、1994年、「有機液肥製造施設」を建設。液肥は農地に撒かれ、作物に吸収されて農作物を育て、食料として人を養った後、ふたたび液肥になるという循環システムをつくった。国の指定外施設だったため施設建設の補助金を受けることはできず、自己財源でまかなった。だが、年間の運営費約4,000万円は広域衛生組合の施設の負担金約7,000万円より約3,000万円安いため、初期投資は10年で回収し、その後は毎年約3,000万円を節減していることになる。さらに、液肥の散布は液肥製造施設の担当職員が行うため、農家は化学肥料代を節約できるほか、散布の労働力も軽減できる利点もある。地域内の有機資源を循環させるシステム全体の効果について、佐賀大農学部准教授の田中宗弘さんは次のように評価する。

「稲が丈夫に育つだけでなく、し尿処理コストやエネルギー消費量を節減できる経済的・環境的にすぐれたシステムといえます」

 ところが、2000年に法律が改正され、し尿を原料とする液肥を「有機肥料」と呼ぶことはできなくなる。打撃を受けた町では、有機農業を「循環型農業」と名称を変更し、液肥を利用した米の販売強化に乗り出す。産業課の田村さんは当時を振り返って次のように語る。

「米の販路のひとつが、アメリカの余剰農産物処理のために主食をパンにしていた学校給食でした。まず3年以内に町内産米の信頼を得る、その後5年以内に完全米飯給食にする目標を立てました」

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有機液肥製造施設では、町内で発生するし尿や浄化槽汚泥を21日間かけて発酵させ、液肥をつくる。年間約8,800t生産される液肥はすべて町内の農地に還元される
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液肥にはリンが不足していたため、8年ごとに回収を義務づけられている消化器中のリンを、液肥に混合した「モリタ1号」を開発した
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九州各地で液肥を利用する自治体に広く普及している液肥散布車は、築上町の液肥利用農家らの創意工夫による改良の積み重ねによって生み出された
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液肥製造施設の職員は、液肥を製造するだけでなく、町内の農地への液肥の散布も担っている
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水田には、田起こし前に10aあたり5tの液肥を元肥として散布し、出穂前に追肥として2.5tの液肥を灌漑水とともに流し入れる
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水田には土地の凹凸がある。どの稲にも均等に液肥がかかるよう、職員は水田内を見回り、灌漑水が及ばない場所の稲にも液肥がかかるように目を配る

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