地域循環型農業で実現した完全米飯給食
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安全をめぐる対立を乗り越えて

 当時の旧椎田町の小中学校では、目の前に水田が広がっているにもかかわらず、どこのだれがつくったかわからない米と、アメリカから輸入される小麦を原料にしたパンを主食にしていた。そのうえ、主食を含むほとんどの食材を、福岡県学校給食会から購入していて、町内の農業との結びつきはなかった。県内を見渡しても、学校給食会を通して地場産米を導入している市町村はあっても、直接導入している事例はない。しかし、旧椎田町は、生産農家の利益を確保するため、学校給食会を介さない地産地消にこだわった。

 その実現を阻む最大の理由は、米の「安全性」という問題だった。学校給食会が供給する米はガラス選別機を通し、どんな小さなガラス片も混入しないようにしている。椎田町が自ら学校給食米を供給するのなら、安全性を確保するためにガラス選別機を通さなければならない。学校給食会はこう主張した。

 小石や変色した米などの着色物をはじく色彩選別機は広く普及しているが、高額なガラス選別機は県内にも数台しかない。田村さんは米にガラス片が混入することはないと反論する一方、学校給食会の納入業者もガラス選別機は使っていない事実をつきとめた。ガラス選別機の有無は、学校給食会が権益を守るための抗弁にすぎなかった。

 こうして実現を阻む障害が消えると、旧椎田町は2003年の2学期から町内産米の導入を開始した。06年には、福岡県が「減農薬・減化学肥料特別認証制度」を創設すると同時に、学校給食米を栽培している5軒の農家と2つの営農組合が認証を取得する。有機液肥利用者協議会と学校給食米部会の会長をつとめる田中祐輔さんは、町内産の学校給食米の「安全性」について次のように胸を張る。

「築上町の学校給食米はただ地元産であるだけでなく、学校給食会の米と同じ値段で、ガラス片もなければ、農薬と化学肥料も半分以下という安全生も加わった安全・安心な米になりました。これからも子どもたちのために、安全でおいしい学校給食米をつくり続けていきます」


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液肥利用者協議会と学校給食米部会の会長をつとめる田中祐輔さんは、生産・精米・小売も行い、各学校に米を配達する
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学校給食米を栽培する大田孝さんは、母校の椎田小学校の子どもたちに稲作を指導してもいる


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